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息を止め続けると人間はどうなるのか?(ブラックアウト・サンバとは?)

この記事は約11分で読めます。

息を止め続けた時、人間はいったいどうなるのでしょう? フリーダイビング競技でつきもののブラックアウトサンバという現象について、またマーメイドスイム、素潜りでの息止めで注意すべき点などを詳しく解説します。

「息を限界まで止めたらどうなるのか?」


今回の研究テーマは「息を限界まで止めたらどうなるのか?」です。意識を失う一歩手前、限界ぎりぎりまで息ができないと、身体はいったいどういう状態になるのか知りたくありませんか? だってホラー映画とか犯罪ミステリとかそういうシーンって結構あるでしょう? あれは役者さんたちが演技してるわけですが。

実際自分が体験したり他人が窒息しかけたりするのを見たことある人はほとんどいないんじゃないでしょうか。今日はそんな”ちょっと怖いお話”もしつつ素潜りと息止めについてお話ししたいと思います。

よく見られているのは「息止め動画」


私のYouTubeチャンネルでよく見られているのは息止めチャレンジや、息止めのコツ動画です。YouTubeには息止め動画がたくさんありますし、視聴者の皆さんの中にも学校のプールとか、息止め競争をしたことがある人も多いと思います。コメント欄で頂く質問も、特に海外の人からは「どのくらい息を止められますか?」と息止めに関する質問が一番多いです。

マリダイバー★人魚の学校マーメイドスイム
マーメイドスイム歴10年以上。人魚の学校(愛知県名古屋市)教頭。PADIマーメイドインストラクター。マーメイドスイムのコツ、素潜りに関する実験、グッズレビュー、プールや海のマーメイディング、人魚の学校...

だから人間が息を限界まで止めるとどうなるのか? 具体的な体の反応について興味がある人も多いんじゃないかなと思います。それと息止めチャレンジをする人マーメイドスイムや素潜りをする人が知っておいたほうがいい。いやむしろ、知らずに息止めをするとまじでやばいですよ! というかなり重要なお話をしようと思います。

Netflix「静かなる海」

先日具合悪くて横になってる時にNetflixでドラマを見たんですよ。「静かなる海」という韓国のSFドラマで、ホラーミステリ? ホラーSF? ミステリーの要素もあるかな。なかなか面白いドラマなんですが、その第一話のラストで人間が限界まで息止めした状態を見られるシーンがあるんです。

静かなる海 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
与えられた時間は24時間。命を落としかねない危険な任務。閉鎖された宇宙基地からのサンプル回収に挑む隊員たちを待ち受けていたのは、月面に沈む恐ろしい秘密。

お話をざっくり言いますと、月に向かっている宇宙船が月面に不時着しちゃうんですね。命からがら脱出した途端に宇宙船は月面の谷間にズズッと飲み込まれてしまいます。だから宇宙飛行士たちは徒歩で月面基地まで行くしかないんですね。

月で重力が軽いと言ってもゆーっくりとしか歩けないんですよ。でも宇宙服の酸素はギリギリしかないんですね。やっとこさ基地の入り口までたどりついたときには、酸素残量が3%、2%、1%で死にかけなんです。早くハッチを開けて生命維持装置と酸素をチャージしないと窒息死で全滅──そういう状態です。

で、扉の前でパスワードを入力装置に入れるんですが間違えちゃうんです。酸素がなくて、頭がぼんやりするからです。指も、上手く動かせないんですよ。もう一回入力します。でもまたエラー! 宇宙飛行士さんの目はうつろでヘルメットの頭を叩いて「思い出せ! 思い出せ!」って感じで一生懸命なんですよ。もう、絶対絶命!というシーンです。

ブラックアウトとは?

これはフリーダイバーがブラックアウトする寸前にとても良く似てます。ブラックアウトというのは酸素不足によって、気絶することです。顔を水面に出して呼吸できればすぐに回復するんですが、水中でブラックアウトすると溺死してしまいます。

幸い私はブラックアウトを起こしたことはないですが、このブラックアウトという現象を詳しく説明しますね。前回の動画で私は3分の息止めをしてます。最後までご覧になった方は覚えていると思いますが、最後に私はニコニコしながらI’m OKと言ってます。


あれは何かっていうと、フリーダイビングの競技ではちゃんと指でOKサインをして「I’m OK」と言わないといけない決まりなんです。I’m OKが言えないと失格です。

OKサインできますか?

ちょっと皆さん、OKサインして見てください。で、I’m OKって言ってみてください。簡単でしょ? 誰でもできるはずです。でもブラックアウト寸前だとI’m OKって出てこないんですよ。それどころかまともに立っていられないレベルです。

フリーダイビングの試合で選手は自分の限界ギリギリまで挑戦します。でもその限界の見極めがとても難しいんです。酸素不足で頭が朦朧としてますから選手の中には、顔を水面に出した瞬間にブラックアウトする人もいます。むしろ気圧が急激に変化する浅い水深の方が血圧に影響が大きいのでブラックアウトしやすいんです。水面に出て急にブラックアウトすることが多いです(シャローブラックアウト)。

前回の私の息止め3分動画みたいに笑ってI’m OKとか言えるんだったら、限界はまだまだ先です。もっともっと息止めできます。

頭がぼんやりして、目がうつろで思考力ゼロの状態。なんとかI’m OKって言わなくちゃって思い出して指でサインして、声を出せる──。息止めの限界ギリギリというのはそういう状態なんですね。

宇宙飛行士はスーパーアスリート!?


ドラマの中で宇宙飛行士が酸素0%で頭が朦朧としているのに、パスワードを思い出してそれを指で打ち込むなんて本当にすごいことなんですよ。何度もパスワードを間違えるから非常にイライラするシーンだと思いますが、実際は相当難しいと思います。

本物の宇宙飛行士は低酸素状態で任務を行う訓練とを受けてるのかもしれません。宇宙飛行士はスーパーエリートであると同時にスーパーアスリートなんだなと思います。

ただちょっと実際とは違うかなと気になったシーンがありました。それは「静かなる海」の役者さんたちが体の痙攣の演技をしていなかったことですね。

息ができなくなるとどうなるのか?

息ができない状態が続くと人間はどうなると思いますか? 息を止めてしばらくすると、横隔膜(おうかくまく)が自然にギュッ、ギュッと痙攣するんです。人によってはこの症状が出にくい人もいるんですが、だいたい2分半から3分半ぐらいすると勝手に体がビクッビクッとするんです。しゃっくりのもっと酷いような感じです。

これは無理くりにでも、二酸化炭素を排出して酸素を取り込もうとして、脳が命令して勝手に横隔膜が上下して体が痙攣したようになるんですね。でもまだこの段階では酸素はまだ十分体の中にあるので頭もはっきりしてますし、さらに息止めができます。でもこの痙攣はかなり不快で苦しいんですね。

それだけじゃなく死ぬんじゃないかと思って心が怖がっちゃうことが多いんですよ。だから訓練を受けてない普通の人は怖すぎて息止めをこの段階でやめてしまうと思います。さらに息を我慢していると、先ほどのような頭がぼんやりとする脳の酸欠状態になります。

人体は記憶とか言語能力思考力をつかさどる「大脳」よりも心臓を動かす「脳幹(のうかん)」に優先的に酸素をまわそうとするんですね。

サンバとは何か?


体のコントロールが効かなくなって体がガクガク、手足がバタバタする痙攣が起こったりします。これを「サンバ(Samba)」といいます。ブラジルのダンスのサンバに様子が似てるからでしょうね。

だから映画やドラマで人が首を絞められた時にすぐスーンと静かにはならないんですよ。痙攣したように手足が勝手に、バタバタ動きます。そういう演技をしてる役者さんは、かなり研究熱心で演技も本格的だと思います。

そしてサンバの後に呼吸が回復しなければ、意識を失うブラックアウトが起こります。呼吸できる状態だったら数秒から数十秒で意識が戻るんですが、水中にいて呼吸ができなかったりすると後遺症が残ったり死亡してしまうこともあります。

ただこの一連の流れは結構人によって違っていて、横隔膜の痙攣が起きにくい人とかサンバ状態にならずに、いきなりブラックアウトする人もいます。でもだいたいこんな感じのプロセスを踏んで死に至るわけです。

なんか怖いことばっかり言ってますよね。ごめんなさい。

息止めは気持ちが良い!?

でもそればかりじゃないです。フリーダイバーが良く言うんですけど、息止めをした後は脳内に快楽物質が分泌されるからか、息止めをした後はなんとも言えない、多幸感があります。幸せな気分になるんです。不思議ですよね。なんでそんな仕組みになってるのかちょっとよく分からないですが、ランナーズハイに似てるのかもしれません。

だからフリーダイバーは苦しみながら辛い競技をしてるわけじゃなくて、ある種の多幸感、達成感を感じながら競技を続けていると思います。

正常な判断ができなくなる息止め


ちょっと話がずれたので戻しますが、ここで大事なのは脳に酸素が回ってない時は正常な判断がとても難しいってことなんです。脳が酸欠状態になっていることが自分ではわからなかったりします。頭がぼんやりしていて気づかないんです。

思考力ゼロの状態では自分が水に沈んでるんだか、浮上してるかもちょっと判断つきません。それに前にブラックアウト前の状態についてどこかの動画で話しましたが、「いける、まだいける」って思うのもひょっとしたら勘違いかもしれません。実際はもう限界なんですが、脳がぼんやりしてるから勘違いしてるんです。

お酒を大量に飲んだ酩酊状態に近いかもしれません。酔っ払いの人ってね「大丈夫、大丈夫!」とか言います。けども全然大丈夫じゃないんですよね。

普段なら簡単なOKサインを指で作れない、I’m OKって言えないような状態ってすごくやばいと思いませんか? だから私は息止め動画で、何度も何度も絶対に一人でやらないで!と言ってます。正常な判断ができなくなるかもしれないからです。

マーメイドスイムと息止めについて

そもそも、私のチャンネルはあくまで「素潜りマーメイドスイム研究所」で「素潜りフリーダイビング研究所」ではないんですよね。特にマーメイドスイムにおいては息を長く止めることはそんなに重要じゃないです。

むしろ、長時間息止めを我慢しすぎるのは人魚的に良くないと思っています。だってね、いくら水中で長く泳げたとしても水面に浮上した時にゼーゼーハーハー、ゴホゴホこんなことやってたら人魚っぽくないですよね。

あくまで私個人の美学というか美しいか、美しくないかの問題ですね。正直かっこ悪いです。全然マーメイドじゃないですよ。

……もちろんそういう人がいてもいいんですよ。例えばまだビギナーの時はゼーハー息継ぎしちゃいますし、ヒレもバタバタせわしなくて無駄な動きも多いです。私も昔はゼーゼーやってました。

でも今はそれはやりたくないんですね。水面に上がった時に仲間のマーメイドに「大丈夫?」って心配されるほどゲホゲホむせたり、息が荒くなるのは息止めをしすぎていると思います。

マーメイドスイムは競技ではないです。マーメイドスイムにおいては水の中でも、水の上に顔を出しても「私、全然平気ですが、何か?」みたいに、すました顔で優雅に美しくあることが大切だと思います。

ましてやブラックアウトして気絶して周りの人に救助してもらうとかもっての他ですよ。そんな危ないことをするぐらいだったら、ほんの数秒で浮上した方がよっぽどましです。マーメイドスイムにおいては自分がどのくらい息を止められるのか、限界を把握しておくことはとてもとても大切です。

私個人の息止めの基準

あくまで私自身の個人の基準ですが、水面に上がった時に「ふー」っと息をついてニコっと微笑むことができるぐらいの息止め時間に自分で決めています。

例えば息を吐ききって浅い水底に沈むのは30秒。水深5m以内をぐるぐる回ったり自然に、自由自在に泳ぐのは1分間。ただ単に水底でじーっとしているのは2分

これ以上は頑張らない。このぐらいだったら水面に顔を出したときも「ふーっ」ニコってできますし、ぜいぜい息が荒くなりません。数分休めばまた引き続き潜ることができます。ブラックアウトもまず起こりません。

これは心で秒数をカウントしているわけじゃなくて、これまでの経験で体が覚えているというか特に意識しなくても30秒、1分、2分になってる感じです。

マーメイドスイムでとても大事なことは?


目標の目安としてはMAXで2分から3分息止めできればマーメイドは十分です。これだったら水中で1分ほどぐるぐると泳ぎ回れますし、余裕を持ってパフォーマンスできます。

でも30秒も息が持たなくても大丈夫です。いかに美しく泳げるかの方がずっと大事です。これはフィギュアスケートとスピードスケートみたいなもので、フィギュア選手に「このリンク何秒で回れますか?」とか「時速どのくらいで滑れますか?」って質問するようなものです。速く滑ることよりも美しく滑る方がフィギュアは大事ですよね。

ただアイスリンクで滑ることができるという技術は必要ですよね。マーメイドスイムでは息止めの練習がそれに当たります。

呼吸や精神をコントロールする訓練は必須です。素潜りで息を止めている以上避けて通れないトレーニングです。でも息止めの時間の長さよりも、我々マーメイドスイマーにとってはもっと大事なことがあります。優雅に、美しく楽しく、安全に泳ぐということです。

だから息を止め続けるとどういう状態になるのか、サンバやブラックアウトとは何なのかという知識をちゃんと頭に入れて、普段の練習で自分の潜水時間を把握して、人に迷惑をかけず、安全に潜るのが大事です。

ひとまとめに「素潜り」──と言われますが、魚突きをしたいのか、フリーダイビングの試合に出たいのか、マーメイドになりたいのか、スキンダイビングを楽しみたいのか、目的はそれぞれなんです。

でもどの素潜りでも一番大切なのは「死なないこと」です。だからあまり息止めのタイムにこだわらず自分が水中で何をしたいのかをちゃんと心に留めておきたいですよね。

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