フレンツェル法の耳抜きのやり方・トレーニング法・コツを徹底解説します。フレンツェル法は初心者ダイバーが中級者・上級者へとなるための耳抜きメソッドです。耳抜きのメカニズム、練習の仕方などについて詳しく解説しています。
今回の研究テーマ「耳抜き・フレンツェル法」
今回の研究テーマは「耳抜き・フレンツェル法」です。耳抜きの最難関・フレンツェル法レベル3です。とりあえず耳は抜けるようになった。特に問題なく潜れている。そんなダイバーさんが中級者・上級者へとさらなる段階に進むのが、耳抜きのフレンツェル法だと思います。これがなかなか難しいんですね。
でも大丈夫です! フレンツェル法のやり方、しくみ、練習方法などを日本一、世界一、いや宇宙一かんたんにご説明します。あなたもきっとできるようになります。一緒に頑張りましょう!
耳抜き自体はできますか?
この動画はバルサルバ法にせよ、トゥインビー法にせよ、何らかの形で耳抜きができている方向けです。耳抜きそのものがどういうものか、耳抜きがさっぱり分からないという段階では、フレンツェル法はおそらく理解できません。
だからまずはレベル1とレベル2のトゥインビー法、バルサルバ法、どちらでもいいので、耳抜きそのものはできるという前提でお話します。トゥインビー法、バルサルバ法についてはこちらの記事をご覧になってくださいね。


フレンツェル法とは何か?
フレンツェル法の極意を超かんたんに分かりやすく説明します。フレンツェル法とバルサルバ法との違いは何でしょうか? 一言でズバリ言いましょう「どこの空気で鼓膜を押すのか」です。鼓膜を押す空気がどこにあったものなのか?という違いだけなんです。
鼻から耳へは耳管(じかん)という細い管が通っています。鼻の奥に穴が空いていて、それが耳管の入口です。この耳管は普段はピタッと閉じています。鼻をつまんでいる場合は空気の逃げ道が他にないから、空気は耳管の入り口から耳の内部に逃げるんです。その空気が鼓膜を内側からポコッと押して、耳抜きができるというわけです。
その空気はどこから?
問題はその空気が「どこにあったものか」というとバルサルバ法は「肺の空気」フレンツェル法は「口の中の空気」。この違いだけです。
バルサルバ法は肺の中に溜まっている空気を、横隔膜の力で喉から口、鼻の奥、そして耳管を通って鼓膜へと押し込みます。
フレンツェル法は肺の空気は使いません。口の中にすでに溜まっている空気を耳管から鼓膜へと押し込むんです。
バルサルバ法との違いは?
さらに詳しく違いをご説明すると、肺の空気って口の中の空気よりずっと大きいですよね。だから結構な空気の圧力を作れます。その力強い空気で耳管の入り口をこじ開けて、空気を通して鼓膜を押します。
でも口の中の空気は小さいですね。だからそれほど威力がありません。なのであらかじめ耳管の入り口が開いていることが条件です。この場合耳管を開くのは空気の力ではなくて、筋肉の力です。自分の意思で筋肉を動かして耳管を開く必要があるんです。
フレンツェル法はなぜ難しいのか?
これがフレンツェル法の難しさです。だって耳管ってあなた見たことあります? 私も自分の耳管を見たことがありません。見えない位置についてますからね、見えないところにある筋肉をどうやって動かすの?って思いますよね。耳管周りの筋肉を動かすというのが第一関門です。
そしてさらに第二関門があります。それは「喉の奥を締める」という動作です。喉の奥をキュッと締めて、口の中を密閉空間にしないといけません。じゃないと喉の方に空気が逃げてしまいます。これも見えないから分かりにくいです。
最後に第三関門があります。密閉空間になった口の中の空気を鼻の奥の耳管へ送り出す動作です。何言ってるのか全然分からないかもしれませんが、大丈夫後です。ちゃんと説明しますから、とりあえず
第二関門 喉の奥を締める
第三関門 舌で空気を鼻に送る
この3つの分かりにくい動作を一度にやらなければならないから、非常に難しく感じるんですね。だからフレンツェル法は中・上級者向けの耳抜き法と言われています。
フレンツェル法のやり方 第一関門
では具体的にどうやるかをお話します。まず第一関門 耳管の入り口を開くですが、あくびが出そうで出ないみたいな感じに顎を動かしてください。耳の奥でポッとかキュとかカッとかピッみたいに小さな音が鳴りませんか? 左右いっぺんじゃなくて大丈夫です。右左で時間差があっても問題ありません。これが耳管の入り口が開く音です。
よく勘違いされていて、これが耳抜きの音だと思っている方もいますが違います。これは前段階の耳管が開いた音もしくはほんの少し空気が耳管に入った音です。この音が鳴っただけで耳抜きができたと思って空気を送り込むのをやめてしまうと、上手く耳抜きができません。耳抜き不良が起こります。気をつけてくださいね。
ただあくびをしようとしても、全然が音鳴らないという人も時々いるんですよ。耳管が生まれつき開きにくい体質の人もいます。この場合は何度も同じ動作をやって耳周りの筋肉を意識して鍛えるか、諦めて空気の力で耳管を開くバルサルバ法を行ってください。
フレンツェル法のやり方 第二関門
ではこの小さな音が耳の奥で鳴ったとして、次の第二関門にいきます。第二関門 喉の奥を締めます。男性の場合は喉仏がぐっと上に上がるから分かりやすいのですが、女性も喉を触りながらやってください。ぎゅっと締めるような感覚分かりますか? 実際にグッとかギュみたいに喉を鳴らしても大丈夫です。
口で息をするとハーハーと空気が通りますね。それを喉の力でぐっと蓋をする感じです。空気が通らなくなったらそれで合ってます。これはおそらく誰でも上手くできるはずです。人間はものを食べる時に喉の奥を無意識に締めています。じゃないと食べ物が肺の方に入ってしまってものすごくむせてしまいます。つばを飲み込んだ時に喉仏が上がりますね。この時喉の奥が締まってます。
フレンツェル法のやり方 第三関門
では第三関門 舌で空気を押す。耳管を開いて喉を締めて鼻をつまむ──この段階で口の中は密閉空間になっているはずです。その時に舌の付け根というか奥の方を上にぐっと持ち上げます。そうすると逃げ場がない空気が耳管の中を通って鼓膜を押すはずです。
耳抜きできたのではないでしょうか。できない方は舌の付け根ってどこよ?って場所がわからないかもしれません。
舌の付け根の位置について
「がっこう」って言ってみてください。「がっこう」の前に小さい「ん」をつけて「(ん)がっこう」って発音します。
すると「(ん)が」の時に、舌の付け根が上顎の口の天井部分に一瞬くっつきます。その「(ん)が」の舌の位置を覚えておいて、その部分に舌をぐっと押し付けるんです。
このやり方は正確には「フレンツェルKロック法」と言います。でもそういう名称とか覚えなくていいです。(ん)が(ん)が(ん)が(ん)がと何度もやると場所が分かると思います。
または「Tロック法」と言って、舌の先を前歯の裏側にくっつけて耳抜きを行う方法もあります。これもフレンツェル法の一種です。前歯をつけるTロック法は(ん)がのKロック法が上手くやれると簡単にマスターできるので、まずはKロック法をやりましょう
バルサルバ法とフレンツェル法の見分け方
自分がバルサルバ法をやっているのか、フレンツェル法をやっているのか見分けがつかないという方は、片手をお腹に当ててみてください。耳抜きをした時にお腹がピクッと動いたらバルサルバ法をやっています。フレンツェル法で首から下が動くことは全くありません。
そしてフレンツェル法でちゃんと耳が抜けているかどうかは、鼻の付け根を見てください。鼻がプクっと膨らんで鼓膜がプスッみたいにいったらちゃんと耳抜きできています。鏡を見ながらプクっと膨らんだか確認してくださいね。
フレンツェル法のメリット1
最後になぜこのフレンツェル法をマスターした方がよいか、メリットを3つお話します。まずひとつ目は耳にやさしいからです。
バルサルバ法は空気の力で耳管をこじ開けるので、間違ったやり方をすると耳を痛めやすいです。空気の圧力が強すぎると、ダイバーにとって致命的な耳の病気になります。フレンツェル法は口の中の小さな空気ですから耳への負担は最小限になるんですね。
フレンツェル法のメリット2
2つ目の利点は息止めの時間が長くなります。素潜りだとヘッドファーストで潜ります。バルサルバ法で耳抜きすると、肺から喉、口から鼻へと水面方向から水底方向へすごく長い距離空気を送らねばなりません。大きな横隔膜をぐいっと動かしますし、エネルギーのロスが大きいんです。
でもフレンツェル法で口の中の舌をぐっと動かすだけなら動かす筋肉は小さいので、エネルギーロスが少ないです。その分長く潜っていられるんです。
フレンツェル法のメリット3
3つめのメリットは深く潜れるということです。水深が浅い場合はバルサルバでいいのですが、10m、15m、20mと深く潜っていく場合、水圧で内臓への負担が大きくなります。そんな時に横隔膜という大きな臓器を動かすのは、より負担をかけてしまいます。フレンツェル法なら身体へのダメージを最小限にできます。
おまけのメリットとしてバルサルバだけでなく、トゥインビー、フレンツェルなど他のやり方をマスターしておくと、使い分けができるんですね。普段はフレンツェル法で潜って、体調的にあまり抜けないなという時にはバルサルバに切り替えれてもいいし、バルサルバで潜っていって水深が深くなったらフレンツェルに変更とか、または3種類混ぜて耳抜きしたり。1種類しかできないよりも応用が効くので、色々できたほうが便利なんです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。トゥインビー、バルサルバ、フレンツェル──と3種類の耳抜きを解説してきました。
実はこの3種類だけでなく、他にもマウスフィル法とか全く鼻をつままない方法とかもあるんですが、あえて動画を作る必要はないかなって思います。だってそういう方は上級者ですし、わざわざ私の動画を見なくても独学でマスターできるんじゃないかなって。もしリクエストをいただいたら作るかもしれません。
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