2022年4月24日(日)の人魚の学校練習会に参加しました。人魚の授業とは? 初登校の人魚さんをご紹介。おしゃべりのテーマは「何も考えずに潜るってどういうこと?」です。
人魚の学校とは?
2022年4月24日 日曜日。愛知県名古屋市名東区にありますダイビングショップ&スクールevisにて、人魚の学校の練習会が開催されました。evisのプールは名古屋でも最大級の室内ダイビングプールで、浅いところは水深1.2m。深いところは水深5mあります。水温は27度となっています。
人魚の学校に初登校のマーメイドお二人
この日は常連さんだけでなく、人魚の学校初体験という方がいらっしゃいました。人魚の学校には日本全国からマーメイド志願の方々が集まるんですよ。
初登校の方が最初にするのは写真撮影です。色とりどりのマーメイド衣装(マーメイドテイル)からお好きなものを選びます。そしてファンタジックな背景の前でポーズをとっていただいて写真を撮るんです。
ポージングもチェルシー先生、シェリーナ先生のお二人からアドバイスがあります。手を持ち上げてとか足の向きはこうやって──とかね。だからまるでモデルさんのように美しい写真を撮影してもらえるんですよ。
最初の授業は何をやるの?
その後は練習が始まります。このevisのプールは深いところは5mありますが「さあ! 深いところへ行って潜って!!!」といきなり言われることはありません。最初は足がつく浅いプールで、ヒレの動かし方や泳ぎ方を、シェリーナ先生とチェルシー先生が丁寧に教えて下さいます。だから泳ぎに自信がない方も大丈夫です。
インストラクターから救急法まで、たくさんの資格を持つプロ中のプロの2人の人魚先生が、優しく解説してくださるので安心してくださいね。
この日のマリダイバー
この日のマリダイバーは自作のオルカテイルで泳ぎました。オルカ(Orca)というのは英語でシャチのことです。一般にオルカテイルはいくつか販売されていますが、私は自分で作ってしまった方が早いというか、思い通りのデザインで安くできるので自作しています。
中に入っているのは以前ご紹介したHOTFFISHフィン。ラバー製のフィンです。
ラバーフィンと言えば、世界中の人魚に愛用されているマヒナのマーフィンが一番ポピュラーなんですが、ヒレの形が魚系でシャチには合わないんですね。
なので哺乳類のしっぽのようなHOTFFISHテイルを使ってます。あとはバブルリングの練習をしたり、頭を上にして沈むトレーニングポージングの練習などをしました。毎回自分でその日の課題や目標を決めて自主練をしていますよ。
今回のテーマ「何も考えずに潜るってどういうこと?」
もしフリーダイバー100人に「長く潜るにはどうしたらいいですか?」と聞けば、おそらく100人中 90人以上……ひょっとすると100名全員に近い数の方が「考えずに潜りましょう」とおっしゃると思います。それぐらいとても大切な事です。実際何も考えない訓練をするために、瞑想をトレーニングに取り入れている選手も多いです。
なぜそんなに考えないことが大事なのでしょうか? フリーダイビングはよく「精神のスポーツ」と言われます。もちろん潜る技術は必要不可欠です。有酸素トレーニングをして心肺機能を高めたり、全身の筋肉をしなやかに鍛えるのも欠かせません。こういうのはプロならば当然基礎として行っていることです。
脳は大量に酸素を消費する
でも最終的に競技を決するのは、筋力とかどのくらい肺活量があるかよりも、精神的なものが大きいんですね。というのも脳はものすごく酸素を使う臓器だからです。しかも一生懸命考え込んだり、恐怖や焦りを感じているときには、よりいっそう酸素を使ってしまいます。
例えばスキューバダイビング。生まれて初めて海に潜る初心者と、ベテランダイバーが同じ時間水中に滞在したとします。一定の時間が過ぎて浮上して、タンクの中の空気がどのくらい残っているか比べると、ベテランダイバーのほうがはっきり分かるほど空気の残量が多いです。
特に体験ダイビングなどをする場合は焦ったり、怖がったり、緊張していたりで心臓の鼓動も早いですし無駄な動きも多いです。そして脳がすごい勢いで活動するので、よけいに酸素を消費してしまうんですね。
一息で潜る人には大きな問題となる
ましてや一息で潜るようなフリーダイバーやスキンダイバー、我々マーメイドは、空気の量が限られています。筋肉も酸素を消費しますから、酸素はできるかぎり脳ではなく筋肉に回したいんですね。
そしてブラックアウトという気を失うアクシデントも避けたいわけです。だから自分でコントロールできるのは最終的には「脳」になります。
何も考えないのは意外に難しい
でも実は「何も考えない」というのは特殊技術です。普段から瞑想などの訓練をしていないと、いざというときに頭を空っぽにすることができません
「えーー? 僕は(私は)いつもぼーっとしたりしてるよ」
「ぼんやりするの得意だよー」
っておっしゃるかもしれませんね。確かに瞑想している人はただぼーっとしているように見えます。でも「ぼーっとすること」と「何も考えないこと」は正反対です。
ぼーっとすると言いますが、心の中は次から次へといろんなことが勝手に浮かんでる状態です。何か考えてしまっているんですね。
今日何食べようかなー
そういえば近所のラーメン屋しばらく行ってないなー
あっトイレットペーパー切れてたっけ
その前にドラッグストアに寄らなくちゃ
と、普通の方のぼーっとしている状態は、頭の中に勝手に考えが浮かんできてその考えを連想ゲームみたいに発展させています。
何も考えない状態とは?
何も考えない状態というのは、勝手に湧き上がってくる考えを消して頭の中をしーんとさせることです。何も言葉が浮かんでこない状態。イメージさえも浮かばない状態です。簡単そうに思えますが、普段から瞑想を行っていないとすぐにはできません。
試しにやってみましょう。30秒だけ何も考えが浮かばないように頑張ってみてください。ではスタート!
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いかがでしたか? 頭の中がしーんとなりましたか? おそらくほとんどの方が30秒も続かなかったのではないかなと思います。気がつくと何かしら頭に浮かんでしまったのではないですか? そしてその思考を追いかけてしまったのでは?
30秒できた人は才能があります。さらに1分続けてみてください。5分、10分、15分と何も考えない状態ができた人は天才です! 私の動画など見てる場合ではありません! 今すぐ世界を目指しましょう!
頭に考えが浮かぶのはデフォルト
でもほとんどの方は難しく感じたと思います。なぜかというと、次々に考えが浮かぶのは脳にとってはごく当たり前のことだからです。デフォです。脳はそういうふうにできています。
「でも何も考えないでいたら溺れてしまうのでは?」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。実は潜り込みからキックにいたるまで完璧に体が覚え込んでいるときには、何か考えないほうが上手く泳げます。
プロアスリートのフロー状態とは?
プロのアスリートが試合などで最高のパフォーマンスができた時
「体が勝手に動いていた」
「気がついたら全部終わっていた」
「上から自分を見下ろしているような感覚だった」
という感想を言うことがあります。
これを「フロー状態」といいます。脳がシーンとなって思考が止まる時、自分の実力を100%発揮できます。あれこれ考えない方がいいんです。どうしたらいいかは自分の身体が知っています。
フロー状態を意図的に作り出すために、座禅をしたり瞑想したりするアスリートが多いのもそういう効果を狙っているんですね。水の中で自由自在に長く泳ぐためにはフロー状態に脳を持っていくのがベストです。これの難しさは一度自分でやってみると身にしみて分かると思います。
人間はかつて誰でもフロー状態だった!?
しかしながら我々人間は全員、フロー状態・瞑想状態の達人だった時期があります。それは子供の時です。言葉が話せるようになる前の子供たちの思考は、今に集中しやすいようにできています。
過去のことを思い悩んでいる赤ちゃんとか、将来のことを憂えている乳幼児っていませんよね。彼らはただ「今」だけに集中しています。
あなたが物心つきはじめた頃、自分が集中していた瞬間の記憶を思い出せるはずです。例えば地面のアリの行列をじーっと無心で眺めていた記憶はありませんか? ただただアリを見つめる「今」があるだけで、まるでアリと自分が一体化してしまったような、世界の音がシーンと消え去ったような感覚。きっと誰でもそんな体験を一度は小さい頃にしていると思います。
子どもに戻る時あなたは長く水の中にいられます
そんなふうにただ水だけを感じる感覚。水の中に自分が溶け込んでしまったような気持ち。心の中は静かに優しく静まり返っていて、幸福感に包まれているような、楽しさだけを感じている感覚──そんな子供のようなフロー状態になった時、あなたはびっくりするほど長く水の中にいられるようになります。
長らくマーメイドスイムを続けていますといろんなマーメイドさんやフリーダイバーさんにお会いするのですが、ベテランの方、上級者の方は皆さん性格が明るくて永遠の子供のような無邪気な方とか、人懐っこい素敵な方が多いんですね。
それはやっぱり子供のようなフロー状態を保ちやすい精神状態になっているからだと思います。生まれつきそういう性格の人がダイバーやマーメイドになったのか、フリーダイビングやマーメイドスイムを熱心に行っているからそういう性格になっているのか。卵が先か鶏が先かは分かりませんが、そういうポジティブな性格の方はやっぱり技術力も素晴らしいんですよね。
上級者の潜り人の性格は?
もちろん例外もあります。何が何でも頂点に立ちたい! 人を押しのけても勝ちたい! そういう人も確かにいます。競技は勝負の世界でもありますからね。でも水中で「俺が!俺が!(私が!私が!)」というよけいな考えがあると、余分な酸素を使って息がもったいないです。
技術的に優れている潜り人は、人格的にも優れている方が多いと個人的には思います。
もし人魚がいるとしたら
もし人魚が本当にいるとしたら、きっと子供のような性格だと思います。楽しければキャッキャと笑い、悲しければポロポロ涙をこぼし、お腹が空いたらガツガツ食べるし、腹が立ったらプンプン怒る。
そんなふうに100%「今」だけに生きているのがマーメイドなんじゃないかなと思います。マーメイドの皆さん、頭を空っぽにして何も考えず、静かに優しく子供のように「今」に集中しましょう! そしたらあなたは本物の人魚になれます。自由自在に水に溶け込んで泳げます。
そのために1日数分からでOKです。ぜひ瞑想の訓練を日常に取り入れてみてください。その効果に驚かれると思いますよ。私も毎日瞑想しています。ぜひご一緒にやってみましょう!
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