マーメイドスイムはライセンスがないとダメ!というわけではありませんが、ここ数年で日本でもマーメイドスイムのライセンスが取得できるようになりました。どんなテストをするのか、また問題点についても解説します。
今回のテーマは?
最近広まりつつあるマーメイドスイム。実はダイビングと同じようにライセンス(免許・資格)があります。マーメイドのライセンスとは何か? どんな試験・テストがあるのか? 知られざる人魚のライセンスについて詳しく解説します。
人魚の学校とは?
2022年6月8日水曜日。愛知県名古屋市名東区にありますダイビングショップ&スクールevisにて、人魚の学校の練習会が開催されました。evisのプールは名古屋でも最大級の室内ダイビングプールで、浅いところは水深1.2m。深いところは水深5mあります。水温は27度となっています。
マーメイドライセンスに挑戦!
この日は臨時の練習会で、特別参加させていただきました。というのも今回はお二人のマーメイドのライセンス講習があったからです。なのでチェルシー先生もシェリーナ先生も、お二人の生徒さんにつきっきりだったんですね。私はYouTube動画用の素材を撮影したり、個人練習したりで、自由にプールを使わせていただきました。マーメイドライセンスについては後ほど詳しくお話します。
この日のマリダイバー「自作シルバーマーメイドテイル」
この日のマリダイバーは自作のシルバーマーメイドテイルで泳ぎました。これも随分長いこと使ってます。10年ぐらい前に自分で作ったテイルです。その当時2013年の動画はこちらです。タイの海でのマーメイドスイムをご覧ください。
いや、やっぱ見なくていいです。泳ぎが下手すぎて恥ずかしいんで、代わりにこっちの「初心者の3つの間違い」動画をご覧ください。自分でツッコミを入れている分私の精神的ダメージが少ないんで、こちらの動画の方をどうぞ。
今回のテーマ「マーメイドのライセンスとは?」
マーメイドスイムはライセンスが絶対に必要──ということはありません。たとえば私自身マーメイドスイム特化のライセンスは持っていません。マーメイドスイム用のライセンスはほんのここ数年でできたものだからです。私はそのかわりにPADIのフリーダイバーというライセンスを昔取りました。
昔からマーメイドスイムをしている方は、全くライセンスを持っていない人も多いです。運転免許と違って「ライセンスがないからマーメイドスイム禁止!」というわけではありません。
浅瀬でチャプチャプやるのもOKだし、「深く潜らないとダメ!」というわけでもないです。みんなが自分なりの個性を大切にしつつ、水と楽しく触れ合える──この自由さがマーメイドスイムの魅力だと思います。
近年増加しつつあるシュノーケリング事故
ただし! 最近マーメイドスイムが広まってきていますね。「海やプールで人魚になって泳ぎたい!」と思う方が増えてきています。
その一方素潜りやシュノーケリングの事故も年々増加しています。シュノーケルもマスクも初めて触ったという方が、いきなり南国のシュノーケリングツアーに参加して溺れてしまったり、事故に巻き込まれたり……。悲しいことですが亡くなる方もいらっしゃいます。
今年に入ってから、沖縄県内でマリンレジャーで亡くなった方、または行方不明の方は13人もいます。そのうちの4人がシュノーケリングの事故です。過去10年間での死亡・行方不明者は237人。そのうちのシュノーケリング関係は100人。およそ4割にものぼるんですね。
究極の(Extreme)スポーツ(Sports)・マーメイドスイム
安全に海を楽しめるシュノーケルもマスクも装着していながら、こんなに事故が起こってるんですね。ましてや裸眼で、シュノーケルなしで、両足を固定するモノフィンで泳ぐマーメイドスイムです。マーメイドスイムがもっと人気になれば、さらに悲しい事故は増えてしまうでしょう。
優雅に泳いでいるように見えますが、実はマーメイドスイムはエクストリームスポーツです。命の危険がある究極の(Extreme)スポーツ(Sports)なんです。だからある程度の水泳技術、海や水の中、 身体に関する知識をきちんと身につけていなければなりません。
マーメイドスイムライセンスの必要性
やっぱりある種のスポーツが流行すると、必ず考えなしに無茶なことをやる人が出てきます。だからここ数年でマーメイドのライセンスが普及し始めた──というのも当然の流れです。ライセンスを取得したということは、一通り知識・技術が身についているという証明になります。海難事故を減らすためにも今後さらに必要になってくると思います。
ただ私自身はこの種のライセンスに懐疑的──というか不安に思っているところがあります。このことは後ほど詳しくお話しますね。
マーメイドスイムのライセンスとは?
ではマーメイドスイムのライセンスとは何か? ということについて解説します。マーメイドのライセンスは主に3種類の団体から発行されています。
アメリカを拠点とするSSI(Scuba Schools International)
同じくアメリカ拠点のPADI(Professional Association of Diving Instructors)
ダイビングをされる方はSSI、PADIと言えばおなじみだと思います。1966年設立のPADIが組織としては1番古いんですが、マーメイドスイムのライセンスとしてはIMSIAの方が早いです。
SSIが日本でマーメイドのライセンスコースを始めたのは2020年。PADIは今年2022年6月からです。つい最近ライセンスが取れるようになりました。
人魚の学校のライセンスコース
シェリーナ先生もチェルシー先生も、マーメイドスイムインストラクターをはじめ、スノーケリングインストラクター、フリーダイバー、救急法──など数多くの資格をお持ちです。これだけ多くの資格を持ったマーメイドスイムインストラクターが2人もいるマーメイドスクールは、日本でも人魚の学校だけだと思います。私も生徒の一人として大変誇りに思っております。
各団体ライセンスの内容が違うのですが、ここからはSSIのマーメイドライセンスをご紹介したいと思います。
SSIのマーメイドライセンスについて
SSIのライセンスはレベル別に分かれています。
マーメイド
オーシャンマーメイド
モデルマーメイド
そしてインストラクターの資格があります。今回この練習会で行われたのは、トライマーメイドとマーメイド講習です(だったかな……たぶん)。マーメイドのライセンスは学科と実習の2種類の講習があります。
マーメイド講習(学科編)
学科講習では知識を身に着けます。コロナ以降は、ZOOMなどを使ったオンライン講習が多いです。マーメイドスイムの歴史や素潜りに関する知識、水圧・浮力などダイビングに関すること、マーメイドフィンやテイルなどギアについて、そしてレスキュー法、海の環境についてなど、数時間ほどで一通り頭に入れます。
後で筆記テストがありまして、25問のうち20問以上正解しないといけません。たぶん「素潜りマーメイドスイム研究所」の動画を全部見ている方なら、まあおそらくパスするんじゃないかなと思います(でも動画だけじゃなく講習でもちゃんと勉強しましょう)。今後も知識系の動画を作っていきますので、試験対策としても動画を使ってみてください。
マーメイド講習(実技編)
それと実技の講習です。モノフィン・マスク・シュノーケルをつけて使い方をマスターします。仰向けになって水に浮かぶバックフロート。そのまま水面を泳ぐバックグライド。ドルフィンキック。ダックダイブでの潜り込みもやります。
それからレスキュー(救命法)です。自分やバディが足がつってしまったときの対処法、ブラックアウトした人の救助。人工呼吸や曳航(岸まで泳いで運ぶ方法)を練習しつつ学びます。
あとは泳力テストです。まず300mスイム。フィンとシュノーケルをつけて泳ぎますし、制限時間もないので時間をかければ大丈夫です。フィンとシュノーケルなしだと200mです。
1番の難関は立ち泳ぎ!?
問題は立ち泳ぎです。これがおそらく1番の難関だと思います。10分間フィンなしで立ち泳ぎをしないといけません。顔が水に沈んだらNGです。巻き足、踏み足、あおり足、挟み足──日本古来の古式泳法にもいろんな種類ありますが、とにかくなんでもいいので10分間耐えてください。
それからバブルキッス・バブルハートなどの泡の技、バックフリップやスピンなどのテクニック。これらを練習して学科テストに合格したらライセンス取得となります。
オーシャンマーメイドの場合はさらに海での講習があります。海の場合は海底に沈んだ人を海面に引き上げるレスキューがありますが、他の内容はマーメイドとほぼ同じです。以上SSIのライセンスのテスト内容となります。
ライセンスの問題点について
ただね。冒頭にも言いましたが私自身はライセンスについてはちょっと不安要素……というか心配していることがあります。それはスクールによるライセンスの乱発です。
なんか業界批判になってしまうようで、なんとも言いにくいのですが……長い歴史があり、市場も大きいスキューバーダイビング(スクーバダイビング)におけるライセンスで、すでに起こっていることなんです。
それは技術的にも知識的にも「こんな人に取らせてしまってもいいの?」と疑問に感じるような未熟なダイバーにも、ライセンス認定してしまっているケースがあることです。
本末転倒!? ダイビングのマスククリア
以前マスククリアの動画でも言いましたが、ただライセンスを取るためだけの試験になってしまっていることがあります。本来のマスククリアとは海中でマスクのストラップが切れても、慌てず騒がず マスクを回収して、マスクをつけ直して水を抜き、視界を確保するテクニックですよね。
でもライセンスのテストで、(裸眼で目を開けるのが怖すぎて)ぎゅっと目をつむったままマスクを外して、マスクブローして、はいできました!──みたいな方もいるんですよ。
一体何のためのテストなんでしょうか!? たかがマスクが外れたぐらいでパニック状態になるような人を、深い海の中に潜らせるようなライセンス、本当に本末転倒です!!
目をつぶったまま おっかなびっくりでマスクをつけたり外したりして、それで「オープンダイバーライセンス」なんて「本当に大丈夫なの?」と心配になります。海をなめすぎです。
その技術で海に潜っても本当に大丈夫?
実際マーメイドスイムでもオーシャンライセンスを持っていると言っても「もうちょっと練習したほうがいいのでは?」とスキルに疑問を持ってしまう方もいます。
ライセンスは今後の日本におけるマーメイドスイム発展のためにも、必要不可欠なものになると思います。でもライセンスさえあればいいのか? ライセンスのためだけのトレーニングで果たして安全は確保できるのか? と疑問に思っていることも多いんです。
まあマーメイドスイムのライセンスはまだまだ始まったばかりです。数年の歴史しかありません。だから 今後一つ一つ問題に対処しつつ発展していくんだろうなと思います。最初から全て完璧なものはありませんからね。
マーメイドが心にとめておきたい大事なこと
「ライセンスを取得したい!」「ライセンスのために頑張る!」そういうお気持ちは心から応援したいです。目標があることは素晴らしいです。ただ一体何のためのライセンスなのか? ということは常に私達マーメイド全員が心にとめておきたいことだと思っています。
以前フリーダイビングを習っていた時に、講師の方がこう言っていたことを思い出しました。
誰よりも深く潜れるダイバー?
誰よりも長く息を止められるダイバー?
違います!
最も優れたダイバーとは「必ず生きて戻る」ダイバーです。
どれだけ深く潜れても、水中に長くとどまれても
死んでしまったら、それはダメなダイバーです
とはっきりおっしゃっていました。
私達マーメイドにとって最も大事なことも同じです。水の中を自由に楽しむためにも必ず生き延びてください! お互い事故のないよう、安全にマーメイドスイムを楽しんでいきましょう。
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