トゥインビー法(トインビー法・ツインビー法)のやり方を解説します。飛行機に乗った時に一般の方も行う方法なので、耳抜きの中では最も簡単と言われていますが、実はダイビングの現場では最も難しい方法ではないかと思っています。
「研究テーマは「耳抜き・トゥインビー法」
今回の研究テーマは「耳抜き・トゥインビー法」です。耳抜きの仕方はいくつかありますが、そのうちのトゥインビー法について解説します。トゥインビーという名前はあまり聞いたことがないかもしれませんが、実は一般的に一番良く知られている方法なんですよ。
ライセンスを取る時に習ったと思いますが、耳抜きのやり方は一つではありません。バルサルバ法、フレンツェル法、トゥインビー法、この他にもいろいろありますが、この3つが代表的な耳抜き方法です。そのうちのトゥインビー法についてお話します。
トゥインビー法とは何か?
えっ なにそれ? 聞いたことない……という方も多いでしょうが、実は一般的には一番良く知られている方法です。
結論から申しますと、トゥインビー法はつばを飲み込むことです。つばをごくんと飲み込むことで耳抜きができるんです。正確に言いますと、鼻をつまんでつばを飲み込むのがトゥインビー法、鼻をつままない方法は嚥下法(えんげほう)と言うんですが、まあどちらもつばを飲むという点で同じです。
高層ビルのエレベータが上がっていく時、新幹線がトンネルに入った時、飛行機が上昇していく時など耳に違和感を覚えることがありますよね? そんなときに 親御さんとかから「つばを飲み込むといいよ」って教えられたと思います。そうすると耳がポコとかキュっとかいって元の状態に戻ります。
あれを鼻をつまんでやる方法がトゥインビー法です。地上だと鼻をつままなくても抜けることが多いですが、水中ではより圧力がかかりますから鼻をつまんで空気の逃げ場をなくすことで確実に耳抜きをするやり方ですね。
トゥインビー法のメカニズム
このメカニズムを詳しく説明しますと、つばを飲む時にあごが動きますよね。あごが動く時に耳管周りの筋肉も動かすので、耳管(じかん)が開くんです。耳管というのは前回の記事でも説明しましたが、鼻から耳をつないでいる細いパイプのことです。普段はピタッと閉じているんですが、息を吹き込んだり顎を動かすと、ストローのように開くんです。
そして耳管が開いたと同時につばを飲んで、のどちんこがぐっと上側に動いて口の中の空気を押すんです。すると鼻をつまんで行き場がなくなった空気が耳管の方に流れて、鼓膜をポコンと内側から押します。
ちょっとやってみてください。鼻をつまみます。つばを飲み込みます。はい、これだけです。きっと上手くできたのではないでしょうか?
トゥインビー法のメリット
つばを飲み込む嚥下法やトゥインビー法は、鼓膜や耳管への負担が少なくて理想的な方法であると言われています。耳を痛める可能性が非常に低くて安全です。または子供の頃からやっている方法だと思うので、最も簡単な耳抜き方法であるとも言われてます。
なぜトゥインビー法は難しいのか?
でも実は一番難しい方法じゃないかなと思います。理由は2つあります。
まず第1につばを飲み込んで耳抜きができるというのは、体質的なものが大きいです。生まれつきできる人とできない人がいます。
前に飛行機に乗った時に、小さなお子さんが耳が痛いって泣いていて、お母さんが飴を食べさせたりして「つばをごくんって飲んで」って言ってたんですが、何度やっても「痛いよー!」って泣いてたんです。小さいお子さんだからというのもありますが、体質的につばを飲んだだけでは上手く抜けない人もいるんですよね。
そして第2に海でそれができるのかって話です。耳抜きが上手くできない方はビギナーが多いですよね。海とかダイビングプールもそんなに経験がなくて、きっとかなり緊張していると思います。緊張すると喉が乾きますね。カラカラです。そんな時につばが出ますかって疑問なんです。
しかもビギナーほど頻繁に耳抜きが必要になります。水面で1、2回。水中でも水深5m潜るまでに数回必要かもしれません。そんなしょっちゅうつばを飲み込めます? 私無理だと思うんですよ。素潜りやマーメイドスイムだと潜行スピードも速いです。ほんの数秒で水深5mに到着します。その間につばを何度も飲み込むなんて無理です。
さらに難しいのがスキューバダイビングの方で、スキューバって口をぽっかり開けてレギュレータをくわえてますよね。口で呼吸しているわけです。この状態だと口も喉もカラッカラです。ましてや湿度ゼロの乾いた空気を吸ってます。しつばなんかまず出ないです。
実際の現場では使えない方法では?
この嚥下法・トゥインビー法というのは一応こんなのありますよ──みたいに紹介している机上の空論というか、実際のダイビングではほぼ使えない方法ではと思っています。
もちろん水上でも十分リラックスして慣れているダイバーならできるでしょうが、そういう上級者は もっと別の方法、フレンツェルだったりあごを動かす方法を取るでしょうし、オートマチックに耳が抜けるという人は無意識につばを飲み込んでいることも多いです。
でも耳抜きというものがどういう現象なのか説明するときには、一番分かりやすい方法です。もし嚥下法・トゥインビー法が体質的に合ってる方なら、じゃあちょっとつばを飲んでくださいって言ってその時に耳が鳴ったり鼓膜が動く感覚が自分で分かるので、それが耳管が開いたということです、耳抜きできたってことですよって説明しやすいですよね。
ということでまず最初にトゥインビー法を解説しました。この方法で上手くできない場合でも心配しないでください。大丈夫です。次回お話するバルサルバ法が合っていたり、または別の方法がやりやすいかもしれません。次も一つずつ丁寧にご説明していきますので、耳抜きに困っている方はぜひ試してみてくださいね
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